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代表者挨拶



2018年 年頭所感 「当たり前のトリレンマ」を乗り越えて

株式会社山田組
代表取締役

山田厚志

1. 2018年、新しい年がはじまりました

 季節が巡り新春を迎えました。今年も一年、どうぞよろしくお願いいたします。
 さて、私は年に一度、1月初頭に代表者挨拶を更新しています。振り返れば社長に就任して初めて迎えた2002年の1月以降、毎年この挨拶文を更新してきました。就任時に47歳だった私は今や63歳になり、本来なら後進に道を譲ってもおかしくない年齢になりました。今までの道のりを振り返ると感慨深いものがあります。
 しかし、そうは簡単に荷が降ろせないのが、今の建設業という仕事の大変さです。せめて少しでも社員や後継者に良い状況を創り出してから身を引こうと自分なりに奮闘する日々の一端を記すことで、今年のご挨拶としたいと思います。


2. 「かかるものはかかる」という「当たり前」

 冒頭から自社の恥をさらすようで少し躊躇しますが、敢えて正直に記します。
昨年9月末の前期決算で当社は4件の工事現場で合計およそ4千万円の欠損を発生させました。
 欠損の具体的な要因は各現場によってさまざま異なりますが、共通していることは「赤字現場とはいえ協力してくれた施工会社や材料メーカー等には何ら迷惑をかけなかった」ですし、当たり前ですが現場に従事した社員の処遇を損なうこともありませんでした。いわば身銭を切って公共工事を完成させたのです。
 4つの現場とも「設計図書と現場条件が大きく異なる」「地元には工事に反対する声がある」「受注金額が足りない」等々、次々と目の前に現れる難問を一つ一つ乗り越えながら、当社社員はただひたすら工事の完成をめざして最善を尽くしました。そしてその成果は無事故無災害の達成や優良工事表彰などの形となって実りました。しかしただ一点、会社に利益をもたらすことができなかったのです。なぜか?
 ごく簡単に記せば、「現場には工期があって待ってくれない。当初に想定していなかった工種や増工があっても地元のため発注者のために工事を進めなくてはいけない」として、当社の現場責任者は「かかる費用は当然支払う」ことになったわけです。これが一つ目の「当たり前」です。

河川、道路、上下水道…当社社員の取り組む公共工事は多岐にわたります
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3. 「もらう以上には支払わない」という「当たり前」

 当然ながら当社にも工事現場ごとに原価管理を行う仕組みがあります。着工前には実行予算書を作成・提出して、その計画に基づいて年間の経営計画が立てられていますが、結果的には4つの現場でその計画が崩れていったのです。
 全社的な原価管理を行う部署の社員は、こう考えます。「どうして請け負った金額以上に支払うのか」…そうです、管理を担う者にとっては「もらう以上に支払わないことは子どもでも分かる至極当然なこと」。これが二つ目の「当たり前」です。
 「やってもらったらそれに見合う代金は当然支払う」と「決められた予算の枠を守って支払える範囲内で当然支払う」…どこの建設会社でも起こりそうな、この二つの「当たり前」の相反関係。極めて単純な図式ながら、その実、現場と管理の部署の社員がそれぞれの職務に誠実であればあるほど克服が困難な経営的ジレンマではないかと思います。
 もちろん、このジレンマの克服には技術者のスキルアップや全社的な資材調達力の増強等々の不断の自助努力が必須ですが、そうした自社の取り組みをもってしても如何ともしがたい大きな「当たり前」が存在することを次項に記しておきます。

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4. 「請けた以上、損してもやり切れ」という「当たり前」

 「せめてもう少し請負金に余裕があれば」「設計図書の完成度や工期の余裕度がもう少し高ければ」…経営者ならずとも公共工事を元請として請け負う建設業に携わる人達なら考えることは同じはずです。
 ところがそんな私たちの切なる願いを許さないのが発注者の行政です。すなわち「請けた以上は弱音を吐かずにやり切って当然」という3つ目の「当たり前」が、問題の解決をより困難にしているのです。ジレンマでも克服が難しいのに、ましていわんや私たち建設業者が直面しているのは「当たり前のトリレンマ」なのです。
 ここで慌てて記せば、私が元請建設業経営者として自社の不出来の責任を棚に上げていたずらに手前勝手な泣き言をぶつける建設業者でないことは、地元の皆さんや当社の発注者であれば十分承知されていると、いささかなりとも自負しています。
その上で敢えて記しています。国は建設業に従事する若い担い手の育成や就労環境の向上のため、さらには地域の防災・減災の担い手として経営健全化維持のためにも適正な工事利益を含む受発注を標榜していますが、その精神が県・市レベルまではなかなか浸透してきていないというのが私の実感です。
 一例を挙げれば、いたずらなダンピング受注を助長する地方自治体の公共調達の仕組みはなかなか改まりません。「ならば応札しなければ」と指摘されれば返す言葉もありませんが、無理な応札でもしなければ受注のチャンスもありません。
 やっとの思いで受注した工事の施工打ち合わせに当社担当者が発注者の下を訪ねれば、事前に見えていなかった施工上の難問が次から次へと立ち現れます。問題の責任の所在を問い質(ただ)しつつ、なんとか設計や工期の変更を希望しても「予算がない」「前例がない」「なんとかやってくれ」等々の理不尽な返答を繰り返すばかり…もうそんな事態が何年続いているでしょう。
 こうして、「なんとしても工事を完成させる」という現場部門の「当たり前」、「入ってきたお金以上には支払わない」という管理部門の「当たり前」、そして「請けた以上は無理を承知で完成を強いる」という発注者の「当たり前」の3つがぶつかり合うトリレンマの図式が毎年のように複数の現場で発生するというわけです。

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5. 未来に花咲く種を播く

 「トリレンマ」といえば想起されるのは「環境」「経済」「性能」の「三すくみ」の構図です。例として分かりやすいのは自動車で、一昔前までは環境に良い車はコストが高くて走行性能も相対的に劣っていました。このままでは普及しないと思っていたら国の後押しと自動車メーカーの華々しい技術革新のおかげで、今では見事にトリレンマを解決して「エコで経済的で走行性能の高い車」が続々と生まれてきていることはご存じの通りです。
 地域に根ざす建設業界もこれと同様に…とはいかないかもしれませんが、私は優良な施工力を磨きつつ、さまざまな地域貢献活動の実績を積む業者にインセンティブを与える「社会責任調達」の仕組みが近い将来、国主導で必ず採用されると予測しています。税金を投入する公共工事にふさわしい利他的精神に富む建設業者に適正な金額で発注する仕組みが確立すれば、「当たり前のトリレンマ」は自ずと解消されていくはずです。そのことを信じて、当社は日々の業務に加えて地域防災大会の実施をはじめ、さまざまな貢献活動に取り組んできました。
 最後にその取り組みの一例として「環境出前講座の実践」をご紹介しましょう。

「もったいない工作」「エコブリッジづくり」「ストローハウス耐震学習」
など当社の取り組む環境出前講座の様子
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 当社は過去10年以上にわたって継続的に学校・児童館などへ出前講座に出掛け、次世代を担う子どもたちの環境意識の向上と建設業が実践する環境活動への興味・関心を高める活動に取り組んでいます。特にこの3年ほどは年間の講座回数が20回を超え、要請・打診はそれを上回っています。
この活動は代表者である私が率先して行うことで社員に過度な負担をかけることなく継続できていますし、時に同行する社員には子どもたちのダイレクトで好意的な反応が仕事に向き合う上での意欲向上に繋がっていると思います。
 厳しい経営を続けながらの貢献活動は大変ではありますが、この環境出前講座の実践は業界にとっても当社にとっても未来に繋がる大切な種を播く取り組みとして2018年も変わらず続けていくつもりです。そんな当社の活動を引き続き温かく見守っていただければ大変嬉しく思います。
 最後に、皆様にとりまして平和で充実した一年になりますよう心から祈念して筆を置くこととします。ご一読くださり、ありがとうございました。

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